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時 の 守 人
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■ RRN1  時 の 守 人 ■

■第4章 源五郎のビデオレター■  ■■担当:魅夜素■■

1部 源五郎のビデオレター
 「自由の女神」は、アメリカのシンボルみたいなもんだ。そんなことは、誰だって知ってる。
 しかし、今の椿山5兄弟(巧太はもちろんいないが)にとっては、そんなことはどうでもよかった。
「これも、<テロカード>なのかぁぁっ??」
 健太が、顔を近づけてじっくりと見てみる。すると、修太が口を開いた。
「何かでもこれはただの銅板に、テロカードと同じ模様が彫ってあるだけみたいだ。」
「触ってみようぜ!!」
 健太がそのテロカードそっくりのプレートを押すと、「自由の女神」がぱっくり半分に開き、その中に、四角い隙間があった。
「うわおぅっ!!ひみつきちだ!!ひみつきち!!きっと、このすきまに<テロカード>をはめれば、このたなが開いて...うわはーい!!」
 真太が大はしゃぎで言うと、裕太が、
「まさかああ、そんな訳ないだろお。真太もガキだなああ。」
「てめえもガキだろうが裕太!!真太も真太だ!!こんなせめー家に秘密基地なんて....」
「いや、待ってくれ、秘密基地かどうかは分からないが、真太の言ってることも、まんざら大間違いって訳じゃなさそうだ。」
 健太を遮った修太は、なんだかんだ言いながらさりげなく「自由の女神」に、「テロカード」を差し込んでいた。そして、書棚が開いて...といっても、床から一メートルくらいの中途半端なところから開き、そこに、異様な形のテレビみたいな物が出てきた。
「なんじゃこりゃあ!?」
 修太が驚きの声を上げるとほぼ同時に、その、テレビに、よく知っている人の顔が現れた。
「じいちゃん!!!!??」
「あのくそじじい、いつの間にこんな物を...」
 テレビに映ったのは、椿山源五郎、彼らの祖父であった。そして、源五郎は喋りだした。
<おまえ達、元気にしとるか?おまえ達がこれを見る頃は、もうワシは「キーノラント」へ行っておるじゃろうな。>
「っていうことは、これは爺ちゃんが生きているときに記録して置いたって事だな。」
 修太の推測通り、源五郎はこちらのことなど気にせずに喋り続ける。
<「遺書」の中から「テロカード」を見つけて、すぐこの「自由の女神」のことは思いついたじゃろ?何つってもワシがしょっちゅう自慢しとったからなあ。>
「自慢してた?俺は大事そうに磨いてる所しか見たことなかったぜ??」
<もしかして、「テロカード」の真ん中の白く光る部分には触れとらんじゃろうな?もし触れたら、「シュラ」にしばらく一人でおらねばならなくなるからのう。>
「早くいえよ!!もう巧太がいっちまったっつーの!!アホ!!」
「もうちょっと静かに見ろよ。」
<ま、それもいい力が着くから、今「キーノラント」で起こっていることを解決するためにはなるがな。どうせ、「シクストーン」があれば、すぐに皆で、「シュラ」で力を着けて、「キーノラント」に手伝いに来てもらえるはずだ。>
「<シクストーン>?何じゃそりゃ?俺は<シスコーン>の方が美味くていいと思うぜ?」
<そう言えば、「シクストーン」は確か巧太に預けといたはずじゃ。黄色の半透明で、中から虹色の光を発している石じゃ。あと、使い方じゃが...ウグ、ゴホッ。そろそろ出発せねばならないか..すまないが、使い方はすぐ分かるはずじゃ..ゲホ、ブッ。また、「キーノラント」で会おうぞ。このテープはこれで終わりじゃ。>
 ザーッ
「............」
「これ...きっとじいちゃんが死ぬ前の日に録ったんだよねえええ...」
「...何だよくそじじい!!...中途半端でぽっくり逝きやがって!!...」
「よせ、健太。だが、巧太がその<シクストーン>とやらを持ってるところ、見たことあるやつ..居るか?」
 皆、首を振る。が、裕太だけは、張り切って、手を挙げた。
「ボク、巧太兄ちゃんが、そんな石もってたの見たことあるよおお。」
「ほんとか?」
「そういえばぼくも見たよっ!!何か、かのじょにあげるとか言ってた!!」
「あの大馬鹿野郎め!!!!!(怒)」
 健太は、顔を血走らせて、今にもキレんばかりである。

2部 Mr.ホワイトは冬がお好き
 巧太は、「クロシェット」の鈴に導かれながら、暗闇の中を進んでいた。
(なあ、ニュイ。俺が片づけた課題は、「重力」だけだよなあ?)
「何言ってんのよ、マスター。十年に一度くらいは、頭を使ってよね。」
(どういうことだよ?)
「だから、あんたは、<リベルテ>で<重力>を克服したし、闇だって、<クロシェット>を使うことを命令してくれたじゃない。それに、あたしが居るんだから、孤独じゃないでしょ?それともあたしじゃご不満かしら?」
(うん、ご不満。)
「なにいいいい!!!(怒)」
(いやいや、冗談だよ。でもさ、それだったら、もう、「シュラ」から出られてもいいんじゃないのか?)
「それは、多分、シーラ様がまだマスターには力が必要だと思って、<シュラ>で力を着けてくるようにしてるんだわ。」
(シーラ様って?)
「ホント、何も勉強しないできたのね。呆れて顎がはずれそうだわ。シーラ・カナリー。<時の守人>を呼べるのは彼女だけなの。」
(あの、時々意味ありげなことを脳味噌に直接言って来る女か?)
「そうそう。あの方はそういうの好きだしね...」
 しばらくすると、何か、明るくなりだした。頭上に、薄く、光が射し込んでくる。見えなかった物が、少しずつ見えてきた。
「朝だわ..」
(朝があるのかい?<シュラ>にも)
「そりゃそうよ。朝がなけりゃ、朝ご飯はいつ食べるのよ?」
 そりゃごもっともと、巧太は思った。わずかに明るくなり、周りを見回すと、それは、何か巨大なドームのように見えた。そのドームの中に、巧太達は居た。
 ニュイの方を見ると、彼女の姿もうっすらと見える。身長は二十センチぐらいだろうか、巧太は、てっきり、鳥か、それともよくRPGで出てくるぴかぴか光った妖精みたいなやつかと思っていたが、彼女は、黒のショートカットの髪、黒のミニスカートに黒のブーツ、黒の長袖Tシャツといった、結構カジュアルな服装だった。しかし、全部黒で決めているのは、さすが夜の精霊である。それに、これだけは予想通り、背中に羽があった。しかし、意外なことに、その羽は真っ白で、さらに、彼女の顔は、結構「かわいい」ことだった。これは、巧太にとってはラッキーなことだった。
「何よ、じろじろ見ないでよ。嫌ねぇ。女はデコレ..デリケートって言ってるでしょ。」
(ごめんごめん。でも、朝になったって事は、もう「シュラ」から出られるんじゃないのか?)
「だから、何度も言うように、マスターはまだ<時の守人>になるには力不足なの。」
 と、その時、巧太の鼻に、冷たい物が落ちてきた。
(このドームは、雨漏りでもするのか?)
「雪、氷、風...」
(は?)
 だんだん降ってくる物は量を増してきた。雪だった。さらに、地面は凍りだし、風も吹いてきた。
(何だ何だ?冷房が効きすぎなんじゃないか?ここは?)
「雪、氷、風!!冬の精霊<ホワイト>よ!!こいつは強いわ!!こいつを着けろってのが、試練みたいよ!マスター!」
(なに?へ、こいつ?)
「こいつは四季の精霊の一人で、メチャクチャ強いから、多分これを着けられたら、ここから出られるはずよ!」
 と、ニュイが言った瞬間、つららのような氷の矢が、何本も飛んできた。そのうちの一本が、巧太の肩に刺さり、また一本は、ニュイの足すれすれを飛び去った。
(うぐっ!いてえ!!)
「きゃあ!もう!おニューのスカートが台無しじゃない!!!いや、それはともかく、マスター!早く私を使うのよっ!!」
(どうしろってんだよ!!!)
 そんなこんなのうちにも、何本ものつららはますます強くなった風に乗り、巧太とニュイを少しずつ切り裂くように飛んでいった。そして、彼らもまた、それを間一髪で避け、どうにか致命傷にならないように..と、必死である。
「このままじゃ..きゃっ!..早く!..うひゃ!..ニュイは、重力、闇、孤独だってば!!」
(うおっつ!..そんなこと..いてっ!..いわれても!!)
 巧太は、こんな状態でも、精神を集中させてみた。そうか!ホワイトとか言う野郎、俺達が見えてるから、こんなに正確に攻撃してくるに違いない!!しっかし、こんな薄い光で、よく見えるなあ...それはともかく、俺達が見えなくなれば、やつも...
(ニュイ!..ひゃ!..闇を使うには..わお!..どうすりゃいいんだ?)
「なるほど!..ああっ!..言葉は覚えてないの?..いやっ!もう!」
(そんなの..うわっ! ..思い出すどころじゃ..どひゃ!)
「きゃあ!..いいわ..いたっ!..特別に..ひっ!..英語でも..うっ!..オッケーよ。..もう!ムカツク!」
(英語..おわ!..か..ひょ!..分かるのか?..くそ!いい加減にしろ!)
「きゃ!..いいから!..ひい!..私は..くっ!..マスターの命令なしじゃ..ほっ!..はっ!..力を使えないの!!..きゃん!」
 次から次ぎへとひっきりなしにビュンビュン飛んでくるつららを避けながら、巧太は考えた。
 闇...か。確か「dark」だったよな..しかし、何で英語?まいっか。
(よっしゃ!ニュイ!「ダーク」だ!..いて!)
「了解!マスター!..いた!..ダーク..いまいちだけどいいわ。..おっと!..<闇よ再び我らの元へ帰れ!「ダーク」ッ!>」
 すると、彼らの周りは一瞬にして元の闇に戻り、つららは、目標が定められなくなり、当たらなくなった。
「やったじゃない!マスター!」
(いや。それほどでも。)
「でも、まだやつは攻撃してくるはずよ。あんたを選んだんだからね。」
 ニュイの言ったとおり、今度はやつは吹雪を起こしてきた。巧太は、十月の服装だし、ましてや二人とも、さっきのつららで服に部分部分穴があいているとくれば、考えなしに寒かった。
(くおお!!さみい!これが「冬」の試練なのか?)
「そうよ!へっくしょい!さあ、今度はどうすりゃいいのよ!」
 しかし、巧太が思うに、野郎、ホワイトはかなり頭がいいようだ。四季を司る精霊となると、ニュイなど(といったら失礼かもしれないが)に比べてレベルが違った。
(こうなりゃ、受験生の頭の良さを見せてやるしかないな!)
「いいから、早く脳味噌働かしてよ!こっちはもう飛ぶ元気もないわ!」
 ニュイが、下から叫んだ。巧太は、それに、鼻水をすすり上げて答えた。むろん、真っ暗なので、音が響くだけだが。
 さて、重力、闇、孤独...こんな問題、テストじゃあ出ねえもんなあ..使ってないのは重力と孤独か..
 孤独?待てよ?孤独ってのは、周りからいなくなってしまうことじゃないのかな?いなくなる。この、風と雪さえいなくなれば!まてよ..単語は?孤独..一人?ああ、「alone」でいいかな。こんな所で英語が役立つとは..ケント・デリカットも知らないだろうな。よーし!
(ニュイ!頼むぜ!この雪と風を、いなくならせることができるんじゃねえか?「アローン」で!)
「なーる!孤独ね!へっくし!アローン..これもいまいちね。でもいいわ!あんたホントさえてるわ!<孤独のため、我らの周りから、雪、及び風を排除する!「アローン」!>」
 びっくりだ。彼らの周りから、もちろん見えないのだが、吹雪が消えた。
「これで一安心てとこね。後は、やつを倒す方法を考えればいいわ。」
 そうか..しかし、ホワイト、野郎はこんなに簡単に攻撃をやめるのだろうか..と、巧太が思ったその時、前方から何本かの白い触手がシュルッと伸びて、ニュイの手足に巻き付いた、
「きゃあ!」
(どうした!)
 触手は、続いて彼女の体にぐるぐると巻き付き、ニュイは身動きがとれなくなった。
「油断していたわ!ううっ..捕まったの...!」
(なに?なんだって?)
 巧太には、もちろん見えていないので、状況が分からない。その間にも、触手はニュイをぎりぎりと少しずつきつく締め上げていく。
「ホワイトに..捕まったの!ちょっ!もう!やめてよ!いたたたたた!」
(??..とにかく、「ダーク」を解除するんだ!そうすれば..俺がどうにか助けてやる!!)
「そんなことしたら...ううっ..また..つららが...飛んでくるわ!」
(いいから早くするんだ!!)
「了解!..<「ダーク」..あんたの仕事は...終わったわ!...今日はおとなしく...布団で寝といてね!>」
 闇が晴れた。と同時に、巧太は状況を飲み込み、またつららが飛んできた。まだ薄明かりだったが、巧太にはぼんやりと、ホワイトの姿が見えた。何か、白くて大きな物体だ。その腹(?)からのびている四本の細く長い触手が、ニュイの手足や体に何重も巻き付いて、動けないようにしている。
「マスター..ぐっ..助けて..くうっ..このままじゃ..いたた!..あたし...お先真っ暗だわ!..」
 やつはホントに頭がいい...ニュイを捕まえられちゃ、こっちは何にもできない..言葉が思い出せれば..リベルテじゃあどおしようも...リベルテ!意味は「自由」!いいじゃないか!それでいい!
 巧太は、もう慣れっこになったつららを避けながら、母の言葉「まあるい光のたま」を心に浮かべた。さらに、巧太は、何となく、光のたまを手で握るイメージを浮かべた。これだ!野郎までの距離は約2メートル!
「くらいやがれ!!!リベルテパーンチ!!!!」
 ドグシャー。巧太の光り輝く拳に、ホワイトはぶっ倒れた。しかも、ニュイに巻き付いていた触手が、一瞬で砕け散った。さらに、驚くべき点がもう一つあった。
 声が出た。
「ふう..やったじゃない...もう駄目かと思ったわ...あんたを選んで....ホントによかったわ...「リベルテ」の呪を...拳にのせてくらわして....私を<自由>にするなんてね..」
 ニュイは、肩で息をしながら喋った。
「まて..やつにはとどめを刺さなくちゃな..」
 というと、巧太は、後ろに生えていた(何秒か前に気づいたのだが)木に登った。
「何をする気?」
「俺は、体育は得意だからな。それに、ヒーロー物、真太とよく見てるんだぜ。」
「ねえ。ちょっと、聞いてる?やつはもう契約の段階よ!マスターの勝ちだってば!」
「うしろぉっ!」
「きゃっ!」
 ホワイトは、ニュイの背後から気づかれないように足の近くまで触手を伸ばしていた。が、今度はニュイは間一髪でかわした。それでもしつこくニュイを狙って触手が追いかけてくる。しかし、一度見切った触手は、身の軽いニュイには、相手にならなかった。
「ありがと!..とうっ!..同じ手には乗らないわ!..やつは四季の精霊..おらよ!..そう簡単に行くもんじゃないわね!」
「だからいってんだ!とどめを刺すって!」
 巧太は、唯一使っていない「重力」を使うつもりなのだ。
 確か、健太兄ちゃんのバンドでやってた曲に「GRAVITY」ってのがあった。「重力」って意味だったな。あのくそ兄貴も、たまには役立つじゃないか!
「行くぜニュイ!<グラヴィティー>だっ!」
 巧太は、木のてっぺんからニュイに気を取られているホワイトに向かって飛び降りた。
「了解!<彼らに再度巨大な「重力」を与えよ!「グラヴィティー」!>」
「名付けて<グラヴィティーキイイイイイイイイックゥ>!!!」 
 巧太は再度巨大になった「重力」とともに、ホワイトの上に跳び蹴りをかまして落ちた。「重力」が5倍なら、跳び蹴りの威力も5倍である。そして、ニュイはすぐ、「重力」を解除した。
 すると、ホワイトがみるみる縮んでいった。
「我が輩の負けだ。契約するとしよう。おまえはホワイト<冬>の試練をクリアーした。<冬>は、すべての生き物にとって、力を蓄え、そして成長するいい時期だ。おまえは、これからこの我が輩、ホワイトを着けて、偉大な力を持つのだ。」
「ぷっ..」
 ニュイが笑った。巧太も、必死で笑いをこらえた。これを見て、笑わないやつは居ないだろう。
「しょべー!まさかホワイトが着けるとなるとこんなにかわいくなるなんて..ぷふふー!!」
 ニュイは、爆笑している。そのホワイトは偉そうなことをいいながら、身長はニュイと同じくらい、雪だるまそっくりで、さらに、カジュアルだか何だか分からない「むぎわら帽」なんてかぶっている。巧太も笑った。
「<冬>に、<むぎわら帽>はないと思うけど..ぶっ」
「ええい!やかましい!我が輩を着けられるのだぞ!四季の精霊といえば、誰もが腰を抜かす位なのだからな!」「はいはい。」
 少しずつ、日が昇ってきているのか、さっきよりは明るくなってきた。
「うーん、まだ暗いわね...クロシェット、いる?」
 チリーン 
 右の方から鈴の音が聞こえた。
「よし、じゃあ、出口の方に案内お願いね。」
 すると、また、あの女、シーラカンス..じゃない、何かそんなやつが喋りかけてきた。
「巧太よ、そなたは、十分力を身に着けた。よって、<シュラ>を終了し、臨時の<時の守人>として、十分に働いてもらいたい。」
「りんじ?」
「出口までは、もうしばらくである。心配せずとも、<シュラ>を出れば、わらわの元まで来るのはた易いであろう。まっておるぞ...」
 それきり、また声がしなくなった。
「ま、よく分かんないけど、これでいいんだな。それはともかくさ..」
「なに?」
「何で俺、声が出せるようになったんだ?」
「それは我が輩に答えさせてくれ。出番が少ないからな。わが輩達精霊は、人の心が読めるのだ。とは言っても、声に出そうとするくらい、浅い心しか読めないのだがな。それで、マスターが喋ろうとしている言葉を、読みとった。しかし、おまえ自身は、わが輩達が読みとるのに甘えて、自分で声を出そうとしなかった。」
「いや、俺も喋ろうと...」
「それも、心に甘えがあったからだ。しかし、<リベルテパンチ>..だったか?あの時、おまえは、自分で考え、呪を発展させて、自ら拳を放った。その、決心が、おまえの甘えを振り切ったのだ。<時の守人>は、自分に甘えていてはならない。これも、一種の<試練>だったわけだな。」
「うーむ、分かったような分からないような...」
「何か、まだ色々聞きたそうな顔ね。でも、シーラ様が待ってらっしゃるし、歩きながらはなしましょ。」
 巧太、ホワイトは、「クロシェット」の鈴の後に続き、出口へと歩いた。ニュイだけは、巧太の頭に乗っかっていたが。
「えっと、その、おまえに命令するとき、なんで、呪とか、まあそれならまだ分かるけど、英語で言わなきゃならないいんだ?」
「そりゃ、かっこわるいからよ。普通に言うとね。」
「は?そんだけ?ま...いいか。聞いても無駄だな。じゃあいいか?二番目だ。そもそも、ここは何処なんだ?」
「なるほど。わかりやすい質問ね。ここは、<シュラ>で、<キーノラント>よ。」
「いや、だからさ...もうちょい分かりやすく頼むよ。」
「しょうがないわね..<キーノラント>。あなた方は<地球>と呼んでいたわね。その<地球>の、千年後が<キーノラント>なの。」
「??ど?どういうことだ?」
「人類は、そうね..確か西暦2245年に、地球規模の大戦争を起こして、ほとんど全滅したわ。」
「......」
「そして、残った一部の人類は、今までの歴史を見直した。<科学が全てではない>ってね。」
「科学が全てではない?」
「そう。あなた達がいた千年前の<地球>にも、あたし達精霊はいたわ。でも、科学があまりにも誤った方向に進んでいたので、姿を現せず、ひっそりと暮らしていたの。」
 で、ニュイがはなすには、こうだった。

 その戦争で生き残った人類は、迷信だといわれていた、魔法や、呪や、精霊を科学と同様に、それ以上に重要視するようになった。当時は、科学技術も戦争により、ほとんどが失われていて、精霊も、少しずつ、人類の前に姿を現すようになった。しかし、その、戦争で生まれた怨念のエネルギーで、精霊も、汚染されてしまう危険があった。だから、汚染されないうちに、選んだ人間を試して、自分の力をクリアーできたらその人間をマスターとして着けてもらうことで、守ってもらうことにした。こうして、今の「キーノラント」では、ほとんどの人間が精霊を着けている。もし、汚染されてしまうと、精霊が暴走してしまう。昔の地球の異常気象なども、その、汚染された精霊が引き起こしたことだ。
 そしてニュイは、「時の守人」についても、ほとんど教えてくれた。
 椿山家の子孫も、生き残った人類で、その一人は、科学と、そして時の精霊「テロ」と「シク」の力を借りて、「タイムマシン」(マシンと呼べるかは疑問だが)を完成させた。しかし、人間の邪悪な面はなくならないもので、それを使って、時空を支配しようと狙う「組織」があることに気づいた彼は、「時の守人」として、「キーノラント」の一国「スワート」の女王にも協力してもらい、「タイムマシン」である「テロカード」と「シクストーン」を守ることにした。しかし、守る仕事は、困難を極め、人数が必要ということになる。しかし、時の精霊は、椿山の血が流れている者にしか着けられないらしく、そこで、やむを得ず、地球時間でのの10/21日にしか力を使えないという死と生を司る精霊(「スワート」の王族が代々着けている)に、特別に昔の椿山家の人を、今の椿山家に転生させることにした。しかし、それでも、組織から時の精霊を守るのは難しく、ついには、昔から、源五郎を直接「タイムマシン」で連れてくる方法を採った。それが、50年前である。過去から直接連れてきた臨時「時の守人」は精霊を着けていないため、訓練施設として、精霊を着けるための「シュラ」を、「タイムマシン」の出口の一つに設けた。その時は、源五郎の活躍でどうにか一段落したのだが、今回、年老いた源五郎を転生させ、さらに、巧太達も呼ぶことになったのは、今「キーノラント」で大変な出来事が起きているからだ。

「どう、分かった?」
「うーむ、だいたいな。」
「お、もう出口に着いたぞ。」
「まだいまいち分かんないみたいだけど、そのうち全部分かるわ。さて。クロシェットありがと。もう帰ってもいいわ。」
 その時、また、あのシーラカンス(?)の声が聞こえた。
「さあ、そなたはシュラを終了した。よって、ここに、扉を開き、我の元へ招待する。」
 出口というか、巧太達の居るドームの端が、割れて、光が入ってきた。そのドームは、光を遮る効果もあったのだろう。だから、今まで、なかなか明るくならなかったし、夜でも星一つさえも見えなかったのだ。
「楽しみであるか?マスター?」ホワイトが聞いた。
「もちろん。後、その人のとこで、めしが食えるんならもっとうれしいけど。」
「めしを食ってる暇があればの話だけどね。」ニュイはさりげなく言った。
 シュラの「扉」が開き、その外が見えてきた。
「こりゃすげえ。びっくりして肩がはずれそうだ。」
「それを言うなら<アゴがはずれそう>でしょ。」
「デコレーションなやつには言われちまったか..しかし、受験勉強にもなるな。英語とか。」
 受験勉強のことなど、忘れなければいけない仕事に、巧太は就こうとしていた。
 「キーノラント」の「スワート」に、巧太は足を踏み込んだ。二人の精霊とともに..

3部 銀京香の気持ち
 巧太が行ってから、何日になるだろう。2日目だ。祖父が死んだのが10月21日。葬式は、次の日。22日。それから1週間くらいは葬式関係の色々で、また一週間くらいは「これからどうするか」で忙しかった。しばらくして、落ち着いてきて、「遺書」を見つけたのが、そうだ。もう早いもので1ヶ月以上立っている11月30日だ。ばたばたしていると日時が過ぎ去るのは早いものである。そして、巧太がその日突然旅立ち、次の日12月1日、祖父の部屋で「ビデオ」を見て、そして今日。兄弟皆で、祖父の部屋をかき回して、何か手がかりになりそうな物を探しているのであった。
 収穫はあった。修太が、祖父の「ノートパソコン」(最新のペンティアムIIIを積んだやつだ。いつ買い換えたんだか...)の「外付けMOドライブ」になにやらいかにも怪しげな、金ぴかの「MO」がささったままだった。
「すごいぞ。この<MO>のデータ。<キーノラント>や、<時の守人>について、ほとんどのことが、しかも親切に、見やすいように<HTML形式>で保存してあるぞ!僕たちが見るのを予想していたように!!」
「ホントか?ほんとに手の込んだことをしやがるボケじじいだな!」
「これによると、例えばな。<キーノラント>はここより3倍時間の進みが遅いそうだ。なぜかと言えば、実際は時間が遅いのではなく、自転が3倍遅いのであって、<日付>の進み方が遅いそうだ。」
「それで?」
「うむ...<キーノラント>は<地球>の約1000年後であって、その途中の大戦争で、自転のスピードまでも遅めてしまった。と書いてある。」
「ふーん。とうてい、じじいがもうろくして書いた訳じゃなさそうだな。」
 一方、弟二人は、居間でテレビゲームをしていた。
「よし!いけ!」
 ドカ、バキ!ピヨーン。ピンポーン。ドン!
「くそおお。真太なんかに負けないぞおお。」
 <波焼拳!>ドカーン!ピンポーン。<ユウ・ウィン!>
「やったぜええ。ボクの勝ちだああ。」
 ピンポーン
「くっそー!負けちゃった!!!」
 ピンポーン
「どうだああ!思い知ったかああ!」
 ピンポーンピンポーンピンポピポピポピポピンポーン!!!!
「やばいよっ!おきゃくさんだ!」
 二人は、来客のベルも無視して、ゲームをしていたことに、やっと気がついたのである。素早い真太が、ダッシュで玄関のドアを開けに行った。
 ドアを開けると、茶髪のロングでコートを着て、ジーパンをはいた気の強そうなおねえさんが、髪をかき上げて、にらみつけてきた。
「ひいっ!」
 真太は、驚いて、またドアを閉めた。しかし、おねえさんは、無理矢理ドアを開けて、ずかずかと入ってきた。
「何よ。人をさんざん待たせといて、おまけに<ひいっ>なんて。失礼しちゃうわね。巧太は?」
 突然の来客に気づいた修太が駆けつけた。
「あ、銀京香さんでしたね。お久しぶり。巧太なら..部屋で寝込んでるけど。」
「あ、お兄さん。どもっ。」
 京香は、右手でピースをした。
「巧太のやつ、ここ2日なんか風邪とか言って休んでるからさ、さぼりかなーとか思ってちょっと様子見に来たんだ。」
 修太は、ひとまず、巧太は風邪と言うことを学校へ連絡していたのだ。
「とか言って、ホントは巧太のことが心配なんだろう?かわいいねぇ。」
「やだ、もう、お兄さんったら。」
 彼女は修太の背中をバシリと叩いた。
「そんなこと言ったらセクハラよ?ま、それはともかく、巧太に会わせてもらうわ。」
 コートを脱ぎながら、彼女は二階の巧太の部屋へずんずん歩いていった。
「あ、ちょっと!京香さん!待ってく..」
 修太が引き留めたのは一足遅かった。京香はすでに部屋のドアを開け、肩まで脱ぎかけていたコートを落とし、赤のロングTシャツ姿で口をあんぐり開いて立っていた。
「ちょ..これ..どういうこと??」
 巧太の部屋は、むろん、もぬけの殻。ベッドも風邪で寝込んでいた様子は何処にもないし、机は、いつものように、勉強道具すらないスッキリさだ。
「あの...だから...巧太は...」
 修太は、絶対絶命だった。しかも、彼は、正直な性格だった。
「巧太は...<キーノラント>に行ったんだ。」
「は??????」
 もちろん、京香はちんぷんかんぷんだ。飽きっぱなしの口で、せっかくの巧太の彼女の美顔も台無しである。
 その後、修太は、仕方なく、というか、もうやけくそで、京香に事の成り行きを話した。彼女の反応は、意外だったが、彼女らしかった。
「ふーん。面白そうじゃん。しかも巧太からもらった石なら持ってる。ほら。<シスコーン>..だったっけ?」
 京香は、キラキラ光る「シクストーン」(「シスコーン」では断じてない)をポケットから取り出し、修太に見せた。
「おお、さすが巧太が惚れただけのことはある。あれ?君が惚れたんだっけ?ま、いい。これと<テロカード>の正しい使い方は....」
 修太は、祖父のペンティアムIIIの「VAIOノート」のキーボードに指を滑らし、使い方を見た。
「これだ!<テロカード>の..真ん中のくぼみに<シクストーン>を当てる。それで、後は見ての通り?」
「何それ?後は見ての通りって?」
「ま、やってみようじゃありませんか。」
 修太は、兄弟を集め、そして、書いてあるとおりのことをした。すると、「カード」に置いた「シクストーン」から、光の扉が現れた。
「これが、じいちゃんの<パソコン>に書いてあった、<タイムマシン>なんだねっ!」
 すると、前も聞いたことのある女の声がした。
「さあ、皆、すでに巧太は<シュラ>を終了した。急いで皆も<シュラ>を終了して、<キーノラント>を救う手助けをしてほしい。」
「よし、行くぞ。」
 修太は、ちょっと持ちにくいが、外付け「MOドライブ」と「ノートパソコン」を手にして(むろん「バッテリー」も完璧に充電してある。あっちにも「コンセント」くらいあるだろう...)、そして扉へ入ろうとした。 
「ちょっと待って!私も連れてってよ。」
 京香が言った。
「でも、あんた椿山家じゃないだろ。<パソコン>に書いてあったじゃん、これも。椿山家じゃないと駄目だって。」
「大丈夫。だって、あんた達の母親だって、元は椿山家じゃないでしょ。それに、<ヒーロー>には<紅一点>が必要よ」
「ああ。そうかぁぁ。」
 裕太は納得したようだ。
「よし、なら、みんなで行くぞ!」
 五人は、扉の中へ一気になだれ込んだ。<シュラ>は、もう朝なので、巧太の時のように真っ暗ではない。
 修太は思った。巧太もいい彼女見つけたなあ...いや、待てよ..あんた達の母親も元は椿山家じゃないって..まさかあの人..椿山家になるつもりじゃあ......
 いくらなんでも、考えすぎだろうと修太は思った。しかも、後何年か先のこと。

未来は、いくらでも変わる。また、変わらない場合もある....それは神のみぞ知る。だ。

。。。第5章へ。。。
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